60代、仕事が覚えられない|60歳で介護を始めた私の覚え方

「仕事が覚えられない」の記事のアイキャッチ画像 介護の仕事と体づくり

とにかく、覚えられない。

60歳でサラリーマンを定年退職したあと、私は未経験でデイサービスの仕事を始めました。

記録の書き方、送迎のルート、機械の操作、一日の流れ、専門用語。どれも初めてで、ゼロからでした。

同じ立場の人は、けっして少なくありません。中途採用で介護職員になった人のうち48.2%は、前の仕事が介護・福祉・医療とはまったく関係のない仕事でした(介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」)。

介護に限った話ではないと思います。60代で新しい職場に入った人なら、職種がなんであれ、同じ壁にぶつかっているはずです。

この記事では、60歳で始めた私が何に苦労し、どうやって覚え、なぜ7年続いているかを書きます。

60歳の私が覚えられなかったもの

丸いテーブルと緑の椅子が並ぶ明るい食堂

利用者さんの名前

一番苦労したのが、これです。

そのデイサービスでは、利用者さん全員の前で、一人ひとりの名前を呼びながらレクリエーションを進める場面がありました。名前が出てこないと、先に進めないのです。

テーブルごとに固定席は決まっていました。ところが、テーブルの上に名前が貼られていない。マニュアルもない。新しく入った私には、どなたがどの席なのか分かりません。

専門用語

たとえば「体交(たいこう)」。体位交換、つまり寝ている方の体の向きを変えることです。利用者さんの褥瘡(じょくそう・床ずれ)を防ぐために行います。最初に聞いたときは「何それ」でした。こういう言葉が、ほかにもいくつもありました。

何回も聞きました。嫌そうな顔をされたこともあります。

でも、しょうがない。分からないまま動くほうが、よほど危ないからです。

年のせいなのか

窓の外を眺める高齢者の後ろ姿

正直に言うと、60歳を超えて変わったと感じることはあります。

私の場合、サラリーマン時代と比べて記憶を保つ力は少し弱くなったように思います。特に、複数のことを同時に進めると、一つが抜け落ちる。

だから私は、一つひとつやることにしました。同時に2つの仕事をやらない。

逆に、若い人より入りやすかったこともあります。これまでの経験と結びつくことは、すっと頭に入りました。60年生きてきた分の引き出しは、ゼロではないのです。

年のせいで覚えられないのではなく、覚え方が変わった。私はそう思っています。

私がやった覚え方(5つ)

1. 細かい手順より先に、一日の流れをつかむ

振り返って一番大きかったのは、覚える順番です。

細かい手順から覚えようとすると、つまずきます。まず一日の全体の流れを把握して、そのあとで細部を埋めていく。この順番のほうが、覚えやすかったです。

2. 名前は、自分で配置図を書いた

ノートとペンでメモをとる手元

自分のノートにテーブルの配置図を書きました。そこへ、それぞれの席の利用者さんのお名前を書き込んでいったのです。

あとでノートを見返しながら、顔とお名前を確認して覚えていきました。

地味なやり方です。でも、これが一番効きました。

顔と名前が分からないと、声のかけ方も、どなたにどの介助が必要かも分かりません。すべての仕事に影響します。だから、まずそこからでした。

3. 介助の動きは、先輩の背中とYouTube

介護士と高齢男性が向かい合って会話する様子

椅子から車いすへの移乗。車いすからベッドへの移乗。横に付き添って歩くときの歩き方。その一つ一つに危険が伴いますから、ある程度は学んでおく必要があります。

私は介護を始める前に、ヘルパー2級を取っていました。そこで仕事の全体像や、高齢者の特徴を学びました。ただ、実際の現場は、それだけでは足りません。先輩方の動きを見て、現場でのやり方を学んでいきました。

それと、YouTubeです。移乗の動作を動画で発信している方がたくさんいます。これが非常に参考になりました。あとで老健(介護老人保健施設)で働いたときも、十分活用させてもらいました。

そして、介護の仕事を始めて3年が経ったころ、介護福祉士の資格を取りました。60代からでも学べる場所は、思っているより多いのです。

4. 同時に2つの仕事をやらない

複数のことを同時に進めると、一つ抜ける。だから、一つ終わらせてから次に行く。

急いでいるようには見えないかもしれません。でも、抜け落ちて事故になるより、ずっといい。

5. 記録・送迎・機械は、最初の1週間のOJTと「ついでに聞く」

記録の書き方、送迎のルート、マッサージ機の操作。こういうものは、最初の1週間、指導役の職員から実際にやりながら教わりました。いわゆるOJTです。

教える人も、基本的には現場の職員の一人です。私と一緒に現場で動いています。だから、一緒に作業しているときに「そういえば、あの件はどうなんですか」と軽く聞く。改まって時間を取ってもらうより、このほうが聞きやすかった。

いつ楽になったか

日付に丸を付けた卓上カレンダー

「楽になった」と意識した瞬間があったわけではありません。ただ、1か月もすれば、仕事に慣れます。

覚えきれていないことは残っていても、一日が回るようになる。そこまで来れば、あとは基本的な仕事を自分でこなせるようになります。

辞めようと思ったとき

公園で車椅子の高齢男性と介護士

一番落ち込んだのは、覚えられないことそのものより、自分の技量不足でミスや介護事故を起こしたときです。辞めようか、と考えたのもそのときでした。

辞めなかったのは、周りの雰囲気です。「みんな同じような道を歩んできた」という空気がありました。責められるより、「私もやったよ」でした。

どんな事故を起こして、どう減ったかは、別の記事に書きました。

→ 60代、仕事でミスばかり|介護職7年目が起こした事故と減った理由

60代の新人を教えている方へ

若い人と並んで話す高齢の男性

これは、教わった側からのお願いです。

60歳を超えても、プライドはあります。上から目線で言われると、それだけでカチンときます。内容が正しくても、頭に入ってこないのです。

逆に、横の関係で話してくれると、すっと入ります。同じ目線で説明してくれると、質問しやすくなります。

何回も同じことを聞かれて、嫌になる気持ちも分かります。それでも、その繰り返しを我慢するほうが、聞かないで仕事をされるよりずっといい。分からないことはすぐに聞いて直していくほうが、仕事は早く熟練します。そのほうが、職場にとってもメリットがあると思います。

教える人を一人決めてもらえると、助かります

4つの職場で、教え方の体制はそれぞれ違いました。老健と特養では、少し上の先輩職員が一人ついて、その人がしばらくコーチ役をしてくれる体制が整っていました。プリセプター制度と呼ばれているようです。

体制が決まっていると、聞くほうは「この人に聞けばいい」と分かるので、聞きやすい。教えるほうも、たぶん教えやすい。とてもいいやり方だと思いました。

最初のデイサービスには、マニュアルもそういう体制もありませんでした。

よくある質問

Q. メモは取ったほうがいいですか?

私はノートに配置図を書きました。書くことより、あとで見返すことに意味がありました。書きっぱなしでは覚えません。

Q. 何か月くらいで覚えられますか?

私の場合、1か月で仕事に慣れました。全部覚えたわけではありません。でも一日が回る。そうなれば、時間の経過とともに、仕事を自然に覚えていきます。

Q. 介護以外の仕事でも同じですか?

私の経験は介護です。ただ、やったことは上の5つと同じです。このやり方は、職種に関係ないと思います。

Q. 覚えられないなら、辞めたほうがいいですか?

私が辞めようと考えたのは、覚えられないときではなく、ミスをしたときでした。誰でも仕事を覚えるまでには時間がかかります。ミスもします。すぐに辞めると決めるのではなく、もうしばらく続けてみて、判断はその先でもいいと思います。

まとめ

公園で過ごす高齢男性と介護士の女性

私の職場は介護でしたが、仕事の覚え方そのものは、ほかの仕事も同じだと思います。

まず全体の流れをつかんでから、細部を覚える。また全体の流れをつかんで、細部を覚える。その繰り返しのほうが、仕事は身につくと思います。

60代の頭は、若い頃と同じようには覚えられません。同時に2つの仕事をやると、残りの1つは忘れてしまいます。その代わり、これまでの経験と結びついたことは、すっと入る。覚え方が変わっただけです。

「覚えられない」は、恥ずかしいことではありません。何回も聞くのも、恥ずかしいことではありません。聞かずに動くほうが、よほど危ない。

1か月もすれば、仕事に慣れます。辞めるかどうかを決めるのは、そのあとでいい。

私は60歳で始めて、7年続いています。60歳から始めても、遅くはありません。

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