「親を特養に入れるのは、かわいそうではないか」。そう悩んでいませんか。入所した親に「家に帰りたい」と言われて、胸が痛んでいる方もいるでしょう。
周りから「かわいそう」と言われると、自分の決めたことが間違っていたように思えてきます。
私は67歳の介護職で、今は特養で働いています。50歳のころ、祖母を特養に預けた家族でもあります。
預けた家族の側と、特養で働く側。この記事では、その両方の立場から、祖母の5年と特養の現実をまとめました。
読めば、特養のいいところと足りないところ、家族ができることが分かります。
結論から言うと、特養はかわいそうな場所ではありません。祖母が入所したとき、母も私たち家族も、正直ほっとしました。
特養はかわいそうではない。家族はほっとした
特養は、かわいそうな場所ではありません。祖母を特養に預けたとき、家族は「かわいそう」より先に「ほっとした」のです。
家庭での介護が、もう限界だったからです。
祖母が要介護になってから、実家で母が介護をしていました。祖母の認知症が進み、介護する母も高齢でした。老老介護でした。
私が50歳のころ、祖母は特養に入りました。親族が勤めていた特養です。
祖母はその特養で5年暮らしました。家族は、ほぼ毎週末に面会に通いました。最期もその特養で迎え、施設から知らせを受けました。

「かわいそう」より「ほっとした」。それが、母も含めた家族全員の正直な気持ちでした。
まだ家で介護を続けていて、下の世話に悩んでいる方へ。誰に頼めばいいかと、施設を考える目安を、別の記事にまとめました。
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特養に入れるのは、見捨てることではない
特養に入れるのは、見捨てることではありません。特養に来るのは、家庭での介護が難しくなった人です。
新しく入所できるのは、原則として要介護3以上の人です。2015年4月からの決まりで、要介護1・2の人は、やむを得ない理由がある場合だけ入所できます。
特養で働いていても、同じことを感じます。入所してくるのは、家庭ではもう介護できない状態の方です。
特養では、毎日の暮らし(衣食住)は介護士がケアします。日中は看護師がいて、医療を担当します。
私の職場では、週1回、嘱託医(施設と契約している医師)が見回りに来ます。

家族だけで、これを毎日続けるのは無理です。特養のほうが、家庭での介護より良いことは、はっきりしています。
まだ家で介護を続けていて、「長生きが困る」と思ってしまう方へ。その気持ちが限界のサインであることを、別の記事にまとめました。
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参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
「帰りたい」は受け止める。家庭に戻るのは難しい
「家に帰りたい」と言われると、家族はつらいと思います。その気持ちには、私も共感します。
でも、家庭に戻るのは、家族には無理なのが現実です。家で介護できなくなって、特養に来ているからです。
特養で働いていると、利用者さんから「家に帰りたい」と言われることがあります。
そのときは、まず気持ちを受け止めます。「そうだよね。娘さん、また来るよ」と答えています。

家族の方も、同じように答えれば大丈夫です。「帰りたい」と言われたら、まず「そうだよね」と受け止めてください。そして、また面会に来てあげてください。
かわいそうに見えるのは、時間が決まった共同生活
特養にも、かわいそうに見えるところはあります。共同生活なので、自由が少ないことです。
大勢が一緒に暮らすため、一日の流れが決まっています。
食事の時間、起きる時間、寝る時間は決められています。個人の「こうしたい」は、叶わないことが多いです。

家のように自由には暮らせません。それでも、毎日の世話と医療がそろっているのが特養です。
家庭での介護が限界になった人にとっては、安心して暮らせる場所だと思います。
特養がひどいと言われる理由は、人手不足と施設の差
特養が「ひどい」と言われることがあります。その多くは、人手が足りずに待たせてしまうことと、施設ごとの差です。
特養で働いていると、そう言われる理由も分かります。主な理由は5つです。
- 人手が足りず、職員が時間に追われる。呼ばれてもすぐに行けなかったり、急かしてしまったりすることがある
- 相部屋の特養では、自分だけの空間が少ない
- 医療には限りがある。医師がいつも施設にいるわけではなく、急に具合が悪くなれば病院へ運ぶ
- 入院が長引くと、退所になることがある
- 施設や職員によって、雰囲気の差が大きい

医師の人数は、国の基準では「健康管理と療養上の指導に必要な数」とされています。いつも施設にいなければならない、という決まりではありません。
入院については、おおむね3か月以内に退院できる見込みなら、退院後にまた戻れるようにする決まりです。
それより長くなりそうなときは、退所になることがあります。
参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第2条・第19条
施設ごとの差は、見学で確かめられます。見るところは次の5つです。
- 職員のあいさつ、表情、言葉づかい
- 利用者の表情と身だしなみ
- においと清潔さ
- 個室か相部屋か(ユニット型か従来型か)
- 本人に合いそうか

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家族にできることは、面会と届け物
家族ができることは、面会と、衣替えの服や好きな物を届けることです。
施設から頼みたいことは、ケアマネ(介護の計画を立てる担当者)を通して家族に伝わります。連絡が来たら、それに応えれば大丈夫です。
私の職場では、衣替えの時期や、本人が嗜好品(好きな食べ物や飲み物など)を欲しがっているときに、ケアマネから家族に伝えています。

面会も大切です。祖母のときは、家族がほぼ毎週末に通いました。
職員が「娘さん、また来るよ」と言えるのは、家族が面会に来てくれるからです。面会と届け物。それが、家族にできることです。
特養についてよくある質問
Q. 周りから「かわいそう」と言われたら?
A. 気にしすぎなくて大丈夫です。家庭での介護が限界になって選んだのなら、本人のためにもなる選択です。
特養では、介護士と看護師、医師が毎日の暮らしを支えます。
Q. 特養の費用は本当に安い?
A. はい。ほかの施設と比べると、特養は安いです。
国の試算では、要介護5の人が1割負担で30日入所した場合、1か月の目安は次のとおりです。
| 部屋 | 1か月の目安 |
|---|---|
| 相部屋(多床室) | 約11万円 |
| 個室(ユニット型個室) | 約14万7,000円 |
※施設サービス費・居住費・食費・日常生活費(約1万円)を含む試算です。所得によっては2割・3割負担になります。
所得が少ない人は、居住費と食費の負担を軽くする制度があります。市区町村への申請が必要です。
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
Q. 特養で最期まで暮らせる?
A. 暮らせます。祖母も5年暮らし、最期は特養で迎えました。
私の職場では、看取りの時期も基本は4人部屋で過ごします。いよいよという時は、職員が見守りやすい個室に移ります。

ただし、入院が長引きそうなときは、退所になることがあります(⑤を参照)。
Q. 特養にすぐ入れないときは?
A. まずケアマネに相談してください。新しく入所できるのは原則として要介護3以上で、空きを待つこともあります。
待つ間は、ショートステイ(短い期間の泊まり)や老健(リハビリをして家に戻ることを目指す施設)、有料老人ホームを使う方法もあります。
まとめ:特養は、本人も家族も守ってくれる場所
特養は、かわいそうな場所ではありません。祖母は5年暮らし、最期もそこで迎えました。家族はほっとしました。
- 特養に来るのは、家庭での介護が難しくなった人
- 「帰りたい」には、まず「そうだよね」と受け止める
- 共同生活で自由は少ない。それでも毎日の世話と医療がそろっている
- 「ひどい」と言われる差は、見学で確かめる
- 家族ができるのは、面会と届け物
特養は、祖母も家族も守ってくれる場所でした。親を特養に預けることを、自分を責めずに考えてみてください。

