「介護の仕事は体力が要る」と、よく言われます。でも「どれくらい」なのか、数字で書いたものはどこにもありません。それなら自分で測ってみよう、と思いました。私は67歳、特別養護老人ホームのパートで7年目です。
2026年8月、iPhoneの歩数を1か月分集計しました。勤務日は1日およそ12,000歩・7.5km。8月だけで119.8km歩いていました。
先に結論を書きます。介護職に要る体力は「勤務時間中(私の場合は6時間)立って歩きつづけられる体力」。まず、これさえあれば仕事を始められます。
仕事をできるだけ長く続けるために、私がしていることは以下の4つです。
- 勤務時間を体に合わせる。8時間を6時間に減らして、7年続いています
- 週2回の筋トレ。移乗の力は仕事だけでは落ちるので、ジムで補います
- 靴とインソール。履いた感覚で選びます
- 重い利用者の介助は、2名対応かリフト。施設の方針を守ります

1か月、歩数を測ってみた
測ったのは2026年8月の1か月です。iPhoneをズボンのポケットに入れたまま働き、ヘルスケアアプリの歩数を月末にまとめました。

私の勤務は8時から14時までの6時間、週4日です。8月の勤務日は16日、休みは11日でした(iPhoneを忘れた日など、数字の取れなかった日は除いています)。
| 勤務日(16日平均) | 休みの日(11日平均) | |
|---|---|---|
| 歩数 | 11,909歩 | 1,561歩 |
| 距離 | 7.49km | 約1.0km |
| うち8〜14時 | 10,298歩(86%) | ― |
勤務日は休みの日の7.6倍歩いています。しかも勤務日の歩数の86%は、勤務時間の8時から14時に集中していました。通勤や買い物ではなく、仕事そのもので歩いている、ということです。
1時間あたりにすると約1,700歩です。
いちばん多かった日は8月8日の13,237歩・8.78km。少ない日でも10,604歩でした。日によって1割ほどの幅はありますが、1万歩を切った勤務日は1日もありません。
8月に仕事で歩いた距離は、合計で119.8km。沖縄本島の北の端から南の端まで(直線でおよそ106km)を、ひと月かけて歩いて、まだ余る距離です。
6時間で1万歩。なにをして歩いているのか
特養の日勤で、私はとくに走り回っているわけではありません。それでも1万歩になります。
私の職場には、自分で歩ける方はいません。移動はすべて車いすです。つまり、利用者さんが動く距離は、全部こちらが歩く距離になります。
理由は、仕事の中身が「移動の積み重ね」だからです。
- 朝の起床の手伝い。居室を1つずつ回る
- 食堂への移動。車いすを押していく
- 食事の配膳と下膳。厨房と食堂を何往復もする
- 入浴介助。脱衣場と浴室と居室を行き来する
- トイレ介助。呼ばれたら行く、終わったら戻る
- 見守り。フロアを歩いて回る
一つひとつは短い距離です。居室から食堂まで、食堂から浴室まで。ただ、それが6時間つづきます。1回50mの移動を150回すれば7.5kmです。私の1日は、だいたいそういう計算になっています。

介護の体力というと、移乗(ベッドから車いすへ移す介助)のような「力」を思い浮かべる方が多いと思います。力も要ります。でも、日々の体にこたえるのは、力を使う場面よりも「勤務時間中歩きつづけること」のほうだと、7年やって感じています。

休みの日は1,500歩。差が大きすぎる
もう一つ、数字を見て気づいたことがあります。休みの日は1,561歩しか歩いていないことです。
私は休みの日に、週2回ジムで筋トレをしています。1回2時間ほど。それでも歩数は増えません。筋トレは歩かないからです。8月19日は登山の予定が雨で流れて筋トレに切り替えましたが、その日の歩数は1,170歩でした。

つまり私の場合、歩く体力は仕事で、力は筋トレで、別々につくっていることになります。休みの日に歩く習慣がないぶん、勤務日と休みの日の差が7.6倍になっていました。
これがいいのか悪いのかは、正直わかりません。ただ、勤務日の1万歩が「生活の中でいちばん大きな運動」になっているのは確かです。
国が勧める歩数と、比べてみた
自分の数字だけでは多いのか少ないのか分からないので、公的な目安と並べてみます。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の目安と、私の8月の数字を1つの表にしました。
| 1日の歩数 | 1週間の歩数 | ほかに | |
|---|---|---|---|
| 国の目安(65歳以上) | 約6,000歩以上 | 約42,000歩 | 多要素な運動を週3日以上 |
| 国の目安(20〜64歳) | 約8,000歩以上 | 約56,000歩 | 筋トレ週2〜3日 |
| 私の勤務日(週4日) | 11,909歩 | 47,636歩 | 6時間の介護 |
| 私の休みの日(週3日) | 1,561歩 | 4,683歩 | 筋トレ週2日 |
| 私の1週間(平均/合計) | 約7,500歩 | 52,319歩 | ― |
※国の週の歩数は「1日の目安×7日」で計算。私の週は「勤務4日+休み3日」で計算しています。
表を見て分かったことが3つあります。
- 勤務日の11,909歩は、65歳以上の目安の約2倍。休みの日の1,561歩は、目安の4分の1
- 1週間の合計は52,319歩。国が勧める65歳以上の1週間の目安(約42,000歩)を、1万歩あまり超えています。1日に平均すると約7,500歩です。勤務日だけで47,636歩なので、休みの日を入れなくても超えています
- 「多要素な運動を週3日以上」は、ジムの筋トレが週2日。ただし下に書くとおり、仕事の日もこれに当たります
「多要素な運動」とは、ガイドの言葉では有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動などを組み合わせた運動のことです。
介護の1日は、私の感覚では、これに近い運動量だと思っています。6時間歩きつづけ(有酸素)、車いすからベッドへ移し(筋力)、利用者さんを支えて踏ん張る(バランス)。6時間介護し続ける運動量は、それ相応のものと考えています。
休みの日の歩数は少ないままですが、1週間のトータルで国の目安を超えていれば、それでいいと私は考えています。
では、介護職にどれくらいの体力が要るのか
ここまでの数字から、私なりの答えを書きます。
「勤務時間中(私の場合は6時間)立って歩きつづけられる体力」。これが日勤パートの目安です。

私は60歳で未経験から入り、最初の3年は1日8時間・週5日。63歳で疲れが抜けなくなり、週4日、そして1日6時間に減らして、67歳の今も続いています(経緯は介護職は何歳まで働けるのかに書きました)。
体力が「足りるか足りないか」ではなく、自分の体力に合う時間の長さと歩数があるということです。8時間なら1日16,000歩、6時間なら12,000歩。私は6時間を選びました。
67歳の体で続けるために、私がしていること
私が特別に丈夫なわけではありません。その私が、仕事を続けるためにしていることを書きます。
週2回の筋トレ。30年つづけています
37歳ごろから筋トレを続けていて、いま30年になります。今は週2回、市営と県営のジムを使っています。1回2時間ほどです。
仕事で歩く体力は仕事でつきますが、移乗や体位交換で使う力は、仕事だけではついてきません。それを筋トレで補っています。くわしくは市営ジムでの筋トレの記事に書いています。

靴とインソールは、感覚を大事にしています
月に120km歩く足です。靴もインソールも、履いたときの感覚を大事にして選んでいます。8月に靴屋で足を測ってもらったところ、幅が広く、左右で3mm差があることがわかりました。介護職の靴の選び方と、インソールの記事にまとめています。

朝ごはんを抜かない
8時から14時まで、途中で座って食べる時間はほとんどありません。朝にきちんと食べておかないと、11時ごろに動きが鈍ります。私の朝食は別の記事に書きました。

体力がない、限界だと感じたら
ここまで読んで、「自分には体力がない」「もう限界かもしれない」と思った方もいるかもしれません。

私が7年で学んだのは、辞めるか続けるかの前に、選べることがあるということです。
- 時間を減らす。私は8時間→6時間、週5日→週4日にしました。歩数でいえば16,000歩が12,000歩になります。それで7年続いています
- 職場を変える。特養と、デイサービスやグループホームでは、歩く量も介助の重さも違います。職場見学で、実際に働く人の動きを見ておくと判断しやすいです
- 体の手当てを先にする。腰が痛いなら、腰を治してから考える。私は腰痛で休んだ経験があります
重い利用者の介助でバテるとき
「重い利用者を何人か介助するとバテる」という声を、介護職の掲示板でよく見ます。私も同じです。
私の職場では、重い利用者の移乗は2名で対応するか、リフトを使うことになっています。スライディングシートも使います。介護職員の腰痛はどの施設でも深刻で、その対策として施設が方針として決めていることです。
私はこれを、素直に守っています。「一人でできる」と思っても、二人を呼ぶ。リフトがあるならリフトを出す。時間はかかりますが、腰を一度やると、そのほうが働く人にとっても施設側にとってもマイナスが大きいのです。
もし今の職場に、こうした対策がまったくないのであれば、正直に言って長続きしないと思います。体力の問題ではなく、職場の問題です。そのときは、職場を変えることも選択肢に入れてください。
体力が足りないから辞める、という判断も間違いではありません。ただ、その前に「時間の長さ」と「職場」の2つを動かせることは、知っておいてほしいと思います。
よくある質問
Q. 体力がない60代でも、介護士になれますか
始められると思います。私は60歳で未経験から入りました。仕事で歩く体力は、仕事をしているうちについてきます。ただ、最初からフルタイムだと体が追いつかないことがあります。今から始めるなら、週3〜4日、1日6時間くらいから入ってはどうでしょうか。
Q. 夜勤のほうが体力を使いますか
私は夜勤をしていないので、歩数では比べられません。私の職場に、73歳で夜勤専属をしていた男性がいましたが、2年ほどで「夜勤は体にきつい」と辞められました。歩く量よりも、生活のリズムのほうがこたえるのだと思います。
Q. 1日1万歩は、体に良いのですか
歩くことは、基本的に体にいいと思います。私は医師ではないので断言はしませんが、67歳の私が1か月に120km歩いて、いまのところ体に問題は出ていません。
Q. 万歩計はどうやって集計しましたか
iPhoneの「ヘルスケア」アプリの歩数をそのまま使いました。勤務中はズボンのポケットに入れています。月末に、勤務日と休みの日を分けて平均を出しました。
まとめ
- 特養の日勤パート(6時間)で、1日およそ12,000歩・7.5km歩いていた
- 8月の合計は119.8km。歩数の86%は勤務時間中
- 厚労省の目安は65歳以上で1日6,000歩。勤務日はその約2倍、休みの日は4分の1
- 介護職に要る体力は、力よりも「勤務時間中歩きつづける持久力」
- 体力に合わせて時間の長さを変えられる。私は8時間→6時間で7年続いている
- 力は仕事だけでは落ちる。私は週2回の筋トレで補っている
介護職に体力は要ります。ただ、働き方は自分で調節できます。私は67歳で、1日12,000歩の働き方を選んでいます。

数字は毎月とっています。当面、毎月集計して書いていこうと思います。


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