介護の職場を変えるとき、たいてい見学か面接があります。そのとき、何を見ればいいのか。
私はこの7年で、4つの職場を歩きました。60歳で定年退職したあと、まったく別の業界から介護に入っています。4つとも、入る前に足を運びました。
そして4回とも、会ってくださった方は、とても感じの良い方でした。それでも、3つは続きませんでした。いちばん短いところは2週間です。
人の感じの良さは、判断材料になりませんでした。
見るべきは、職場の労働条件が整備されているかどうかです。賃金や規定が現場に公開されているか。シフトは誰がどう決めるのか。朝礼や勉強会は勤務時間の中に入っているか。ここは相手の人柄と関係なく、聞けば事実として返ってきます。
この記事では、見学で見える4つと、聞かないと分からない5つに分けて書きます。67歳・現役7年目の、4回ぶんの実感です。

面接の印象では分からない
まず、私の4つの職場を並べます。
| 職場 | 面接してくれた方 | 印象 | 続いた期間 |
|---|---|---|---|
| 特養の中のデイサービス | 理事長 | ○ | 2週間 |
| 医療法人のデイケア | 責任者(理学療法士) | ○ | 2年半 |
| 同じ法人の老健 | 施設長 | ○ | 半年 |
| いまの特養 | 介護課長・管理課長 | ○ | 4年(継続中) |
印象の欄が、4つとも○になりました。差がつきません。
考えてみれば当然かもしれません。面接に出てこられるのは、その職場でいちばん人に会い慣れた方です。感じが悪いほうが珍しい。
つまり、面接で会った方の印象は、その職場で働き続けられるかどうかとは、ほとんど関係がありませんでした。私はここで一度つまずいています。最初の職場では、理事長の感じの良さを、そのまま職場の感じの良さだと受け取ってしまいました。
だから2回目からは、見るところを決めて行くようにしました。

見学で見える4つ
見学の時間は、長くても30分ほどです。そのあいだに見えるものは、そんなに多くありません。だから絞ります。
① 現場を見せてくれるか
いまの特養は、面接のあとに施設の中を見せてもらえました。
これは思っているより大きいことです。見せられるということは、見られて困らないということでもあります。応接室だけで話が終わる場合、それが忙しさのせいなのか、別の理由なのかは分かりません。ただ、見せてもらえたほうが判断材料は増えます。
見せてもらえたら、次の3つを見ます。
② 利用者をどう呼んでいるか
これがいちばん分かりやすいところだと思います。
最初のデイサービスでは、利用者さんを幼稚園の園児のように扱う場面がありました。2つ目のデイケアは違いました。同じ高齢者を相手にしながら、一人の大人として接していました。この違いは、見学の数分でも耳に入ります。
そして、利用者さんへの接し方は、たいてい職員への接し方とつながっています。
③ 現場が整理されているか
いまの特養を見学したとき、現場がきれいに整理されていました。違和感のある場所がなかった、という言い方のほうが近いかもしれません。
新しいとか、立派だとかではありません。手が入っているかどうかです。設備の古い施設でも、手入れの行き届いたところはあります。逆に建物が新しくても、物が置きっぱなしの現場もあります。

④ 職員の年齢の幅
いまの職場は、20代前半から80代前半まで職員がいます。
これはあとから効いてきました。年齢の幅が広いということは、その年代の人が働き続けられる仕事の割り振りがある、ということでもあります。若い人しかいない職場だと、体力が落ちてきたときに居場所が用意されているかどうかが分かりません。
60歳を過ぎてから入った私にとって、これは大きなことでした。実際、いまも続いている理由の一つになっています。
見学のときは、すれ違う職員さんの年代を見てみてください。数分でも、偏っているかどうかは分かります。
見学では見えない5つ
ここからが本題です。私が3つの職場でつまずいたのは、全部この側でした。見学では見えません。ですから、その場で聞きます。
① 賃金と規定は公開されているか
2つ目のデイケアは、利用者さんへの向き合い方に好感が持てて、2年半お世話になりました。ただ、大きな医療法人でありながら、賃金や労働条件が現場の職員にきちんと開示されていませんでした。自分の給与がどういう決まりで計算されているのか、はっきりしないまま働いていたことになります。
いまの特養は逆です。賃金も各種の規定も、現場の介護職員まで全部公開されています。自分が今どういう条件で働いているのかを、いつでも確認できます。
この差は、入るまで分かりませんでした。

② シフトは誰が決めるか
いまの職場では、副主任がシフトの案を作り、介護課長が最終調整をします。休み希望は前月の10日までに副主任へ出します。
この流れを、職員全員が知っています。特別なことのようですが、私にはこれが大きいのです。誰がどう決めているか分かっていれば、希望も出せますし、通らなかったときも理由が想像できます。
見学のときに聞くなら、この2つです。
「シフトはどなたが作られますか」
「休み希望は、いつまでに、どなたにお渡しすることになっていますか」
すっと答えが返ってくるかどうかを見ます。答えが出てこない場合、手順そのものが決まっていないか、決めている人が現場から見えていない可能性があります。

③ 朝礼と勉強会は勤務時間の中か
最初のデイサービスは、契約では8時半が始業でした。ところが朝礼は8時から始まります。勤務は18時までなのに、そのあと19時から「学習会」というミーティングが全員参加でありました。
これは見学では分かりません。時間割の紙をもらっても、そこに書いていないからです。
聞くとしたら、こう聞きます。
「朝礼や勉強会は、勤務時間の中に入っていますか」
④ 行事の担当はどう決まるか
最初の職場を2週間で辞めた理由は、もうひとつありました。
本人の確認もないまま行事の担当が決められ、その準備をボランティアのように引き受ける、という暗黙のルールがあったのです。そのルールは、どこにも書かれていませんでした。
行事や委員会そのものが悪いわけではありません。担当をどう決めているか、準備の時間をどう扱っているかが、はっきりしているかどうかです。
⑤ この1年で何人辞めたか
後日談ですが、最初の職場は当時、1年で職員の半数が辞めていたと聞きました。
私が2週間でいなくなったのも、その半数のうちの1人だったことになります。離職の多さは、その職場でいちばん正直な数字かもしれません。
聞きにくければ、こういう言い方もできます。
「今、職員さんは何名いらっしゃいますか。この1年で入れ替わりはありましたか」
角を立てない聞き方
とはいえ、雇ってもらう側から聞きにくいことばかりです。私自身、聞けたことばかりではありません。
聞き方で角が立ちにくくなるのは、自分の都合として聞くときだと思います。
- ✕「サービス残業はありますか」
- ○「朝礼は何時からですか。家族の送りがあるので、家を出る時間を決めたいのです」
- ✕「離職率は高いですか」
- ○「職員さんは何名いらっしゃいますか」
- ✕「シフトは希望が通りますか」
- ○「休み希望は、いつまでに、どなたにお渡しすればいいですか」
条件を問い詰めるのではなく、自分がそこで働く段取りを確認する形にします。答えてもらえないときは、それも一つの答えとして持ち帰ります。

続く職場は、労働条件が整備されている
いまの特養は4年目になりました。ここが続いている理由を、自分なりに4つ挙げてみます。
1つ目は、労働条件です。時給はほかの施設と比べても高いほうだと思います。それだけでなく、賃金も規定も現場に公開されています。
2つ目は、休みの相談がしやすいことです。さきほど書いたとおり、誰にいつまでに出すかが決まっています。そのうえで、事情を汲んでもらえることが多い。
3つ目は、職員の年齢に幅があることです。20代前半から80代前半までいます。60歳を過ぎて入った身としては、先に働いている人がいるという事実そのものが、続ける理由になりました。
4つ目は、仕事が自分に合っていることです。介護は体を使います。楽ではありません。ただ私は体を動かすのが好きなほうなので、そこが苦になりません。これは人によって違うところなので、参考程度に読んでください。
並べてみて気づいたのですが、1つ目と2つ目は同じことを言っています。労働条件が整備されていて、それが働く人に公開されている。
最初の職場は、その正反対でした。契約書と実際の時間が違い、担当は本人の知らないところで決まる。労働条件が整備されていないので、こちらから言えることがありません。
見学で見るべきものは、たぶんここです。
歩いた4つの職場
① 2週間で辞めたデイサービス
社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの中の、デイサービスでした。
サラリーマンを定年で辞めて、初めての介護業界です。正直に言えば、見学に行っても中身はよく分かりませんでした。比べる相手がなかったからです。面接をしてくださった理事長の方が感じの良い女性で、その印象がほとんど全部でした。
働き始めて、そのイメージは現場とずれていきました。始業前の朝礼、終業後の学習会、暗黙の行事担当。組織全体が労働基準法をあまり理解していないように感じ、2週間で辞めました。
2週間は短すぎる、と思われるかもしれません。私もそう思いました。ただ、合わない職場を早く外せたという意味では、あの判断は間違っていなかったと今は考えています。あわせて介護パートが続かない4つの理由もお読みください。
② 2年半のデイケア
次は医療法人のデイケアです。リハビリや運動機能の回復に力を入れている施設でした。
責任者が理学療法士の方で、この方も感じが良かったです。そして今度は、中に入ってからも良いところがありました。利用者さんを一人の大人として扱う。前の職場との違いがはっきり分かりました。
続かなかったのは、賃金と労働条件が不透明だったからです。人が悪いのではありません。労働条件の決まりが、働く側に見えなかったのです。
③ 半年の老健
同じ法人の老健施設へ、半年間異動しました。ここも施設長の方が面接してくださって、印象は良かったです。
入ってみて分かったのは、医療職と介護職の距離でした。介護職が軽んじられる空気があり、それが不満の種になりました。
職種間の力関係は、見学ではまず見えません。同じ法人の中でさえ、施設が変われば違いました。
④ いま4年目の特養
いまの職場は、介護課長と管理課長が面接してくださいました。どちらも女性で、やはり感じの良い方です。
違ったのは、そのあと施設の中を見せてもらえたことと、入ってから条件がガラス張りだったことです。4年続いている理由は、さきほど書いたとおりです。
4回目にして、ようやく見るところが分かってきた、という感じです。
その特養に入ってから見えたことは、「いい施設」は外からは見えないに書きました。
よくある質問
Q. 見学のときの服装は?
施設によって違うので、問い合わせのときに聞いておくのがいちばん確実です。介護の職場では、そのまま現場を見せてもらう場合もあるので、動きやすい服装で行く方も多いようです。指定があれば、それに従ってください。
Q. 見学だけして断ってもいいですか?
かまわないと思います。見学は、お互いに合うかどうかを見る時間です。断ることを前提に行くのは失礼ですが、見て合わないと思ったなら、それを伝えるほうがお互いのためです。
Q. 転職回数が多いと不利になりませんか?
私は7年で4つです。多いほうだと思います。それでも今の職場に採用されました。回数そのものより、なぜ変わったのかを自分の言葉で言えるかどうかだと感じています。私は面接で「いろいろな職場を経験したい」と話してきました。
Q. 見学と面接は同じ日にされますか?
施設によって違います。私がいまの特養に入ったときは、面接のあとに施設の中を見せてもらえました。見学だけを先にお願いできるかどうかは、問い合わせのときに聞いてみてください。
Q. 60代でも見学に行けますか?
行けます。私は60歳で未経験からこの業界に入り、いまも67歳で現役です。年齢を理由に断られた経験はありません。ただし体力の要る仕事です。自分の体と相談したうえで、無理のない働き方を先に決めてから行くことをおすすめします。60代の働き方については60代で介護職を続けるブログにまとめています。
まとめ
見学の時間は短く、見えるものは限られています。
私が4つの職場を歩いて思うのは、見学は「合う職場を選ぶ」時間ではなく、「合わない職場を外す」時間だということです。良さそうかどうかは、人の感じの良さに引きずられます。4回とも感じが良かった私が言うのですから、たしかです。
そのかわり、労働条件が整備されているかどうかは、聞けば分かります。賃金の規定はどうなっているか。シフトは誰がどう決めるのか。朝礼は勤務時間の中か。これは相手の人柄と関係なく、事実として答えが返ってきます。
見学は、人ではなく、労働条件が整備されているかどうかを見る時間です。

なお、体を痛めて職場を変えるかどうかで迷っている方は、介護職の腰痛|辞める前に休むという選択も参考になるかもしれません。


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