「親の下の世話だけは、どうしてもできない」。そんな自分を、冷たいと責めていませんか。
親の介護は子どもの役目だと思うほど、できない自分が後ろめたくなります。誰に頼めばいいのかも、分かりにくいものです。
私は67歳の介護職で、介護の仕事は7年目です。今は特養で、トイレ介助やおむつ交換をしています。
それでも、介護の仕事に就く前は、祖母のおむつ交換ができませんでした。
この記事では、下の世話を頼める先と、施設を考える目安をまとめました。
読めば、誰に何と伝えれば下の世話をプロに任せられるかが、今日のうちに分かります。
結論から言うと、親の下の世話ができないのは当たり前です。プロに任せていいのです。
親の下の世話ができないのは当たり前。介護職の私もできなかった
親の下の世話に抵抗があるのは、当たり前のことです。介護職の私にも、家族の下の世話ができなかった経験があります。

排泄の介助は、慣れていない人がいきなりできるものではないからです。
私の実家では、母が祖母を介護していました。母も高齢で、老老介護でした。
祖母は認知症が進み、おむつ交換が必要になりました。当時の私は介護の仕事に就く前で、おむつ交換を手伝うことはできませんでした。
抵抗があるのは、冷たいからではありません。普通の感覚です。
下の世話に限らず、親の長生きを「困る」「迷惑」と思ってしまう自分を責めている方へ。自宅での介護の限界について、別の記事にまとめました。
あわせて読みたい:親の長生きが迷惑と感じたら限界のサイン|認知症の親を見てきた特養職員の体験
下の世話はプロ(ヘルパー・施設)に任せたほうがいい
下の世話は、プロに任せたほうがいいと私は考えています。

介護職が排泄介助をできるのは、仕事としてくり返すうちに慣れたからです。最初から平気だったわけではありません。
私も最初は抵抗がありました。前に勤めていた老健で、1か月ほどで慣れました。
今の特養では、一人で1日に、約10名のトイレ介助と、約8名のおむつ交換(ベッドで)をしています。
職場には専門のトレーナーもいて、不定期ですが指導を受けられます。毎日の仕事でくり返すうちに、慣れると同時に、やり方も上手になっていきます。
だから、慣れたプロに任せるのがいちばんです。
まずケアマネか地域包括支援センターに「できない」と伝える
最初にすることは、ケアマネか地域包括支援センターへの連絡です。

介護サービスの組み合わせ(ケアプラン)を考えるのが、ケアマネの仕事だからです。ケアプランの作成に、利用者の負担はありません。
すでにケアマネがいるなら、ケアマネに連絡します。
介護保険の認定(要介護認定)をまだ受けていないなら、地域包括支援センターに相談します。市区町村ごとにある、高齢者の相談窓口です。
伝えるときは、遠回しに言わなくて大丈夫です。「下の世話だけは、どうしてもできません」と、そのまま伝えてください。
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「居宅介護支援」
おすすめは施設。目安は、親がトイレに一人で行けなくなったとき
私がおすすめするのは、施設への入所を考えることです。目安は、親がトイレに一人で行けなくなったときです。

排泄は1日に何回もあり、夜中にもあるからです。家族が付きっきりになり、家で続けるのが難しくなります。
私の祖母も、そうでした。認知症が進んで家での介護が難しくなり、私が50歳のころに特養へ入りました。
母も家族も、正直ほっとしました。祖母はその特養で、5年暮らしました。
施設に預けるのは、見捨てることではありません。家族が自宅で介護を続けられなくなったときの選択肢です。施設は、主に次の3つから選べます。
特養:費用が安い。入れるのは原則、要介護3以上
特養(特別養護老人ホーム)は、介護士が、毎日の暮らしや排泄を介助する施設です。私の職場も特養です。
新しく入所できるのは、原則として要介護3以上の人です。要介護1・2の人は、やむを得ない理由がある場合だけ入所できます。
ほかの施設と比べると、費用は安いです。1か月の目安は、よくある質問にまとめました。
介護付き有料老人ホーム:要介護1・2でも入れる所がある
介護付きの有料老人ホームでは、ホームの職員から食事や入浴などの介護を受けられます。要介護1・2でも入れるところがあります。
介護の費用のほかに、入居費用や日常生活費(おむつ代など)が別にかかります。条件や費用はホームごとに違うので、見学で確かめてください。
グループホーム:認知症の人が少人数で暮らす
グループホームは、認知症の人が5〜9人の少人数で、介護スタッフと共同生活を送る場所です。要支援2以上の認定を受けた人が使えます。
祖母のように認知症が進んだ場合は、選択肢の一つになります。
あわせて読みたい:特養はかわいそう?家族はほっとした|祖母を5年預けた家族と特養職員の本音
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設」/「特定施設入居者生活介護」/「認知症対応型共同生活介護」
家で介護を続けるなら、夜間と休日の下の世話は覚悟する
家で介護を続けるなら、夜間と休日の下の世話は、家族がすることが多いと覚悟しておいてください。
ヘルパーは、決まった時間に来てもらうサービスだからです。
夜間に来てくれるサービス(夜間対応型訪問介護など)もありますが、住んでいる地域にあるとは限りません。事業所によっては、日曜や祝日に来てもらえないこともあります。
昼間はプロに任せ、夜と休日は家族。そう分けて考えておくと、準備がしやすくなります。昼間に使えるサービスは、次の3つです。
トイレ介助やおむつ交換は、ヘルパー(訪問介護)に頼める
訪問介護のヘルパーには、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)を頼めます。対象は、要介護1〜5の認定を受けた人です。

1回20分未満の短い時間から使えます。朝や夕方など、決まった時間に来てもらう使い方ができます。
夜間対応型訪問介護が使える地域なら、夜(18時〜8時)に定期的に来てもらい、排泄の介助を受けられます。
日中はデイサービスに任せられる
デイサービスは、通っている間の食事や入浴などを、職員が支援するサービスです。

入浴中に便が出ても、職員が対応します。私の職場(特養)は利用者が約100名で、施設全体では1日に20〜30名の入浴介助をしています。入浴中の排便は普通にあります。
何日か休みたいときは、ショートステイを使う
ショートステイは、短い期間だけ施設に泊まるサービスです。国の説明でも、目的の一つに「家族の介護の負担軽減」が入っています。
家族の病気や冠婚葬祭、出張のときにも使えます。
ポータブルトイレや尿とりパッドで、下の世話を軽くする
家で介護を続けるなら、福祉用具や福祉用品を使って、下の世話そのものを軽くしてください。トイレまで付き添う回数や、おむつを替える手間が減ります。
下の世話で役に立つのは、主に次の2つです。介護保険が使えるかどうかが違います。
ポータブルトイレ(福祉用具):介護保険で購入できる
ベッドのそばに置けば、夜中にトイレまで付き添わずに済みます。
1年間(4月〜翌年3月)で10万円分まで、費用の9割が戻ります(1割負担の場合)。買う前にケアマネに相談し、指定を受けた事業所で買ってください。
おむつ・尿とりパッド(福祉用品):介護保険の対象外
尿とりパッドは、おむつの内側に重ねて使います。汚れたパッドだけを替えればよいので、おむつを毎回替えるより手早く済みます。
代金は介護保険の対象外です。市区町村によっては紙おむつの支給などを続けているところもあるので、窓口で確かめてください。
おむつやパッドは、親の体の状態に合わせて選びます。私の職場では、ライフリーの次の組み合わせを使っています。
\ 立てる・座れる方に /
リハビリパンツ(5回吸収)+紙パンツ用の尿とりパッド(2回吸収)
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\ 寝て過ごすことが多い方に /
テープ止めおむつ(4回吸収)+テープ用の尿とりパッド(3回吸収)
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トイレの手すりや、和式から洋式への取り替えも、介護保険で20万円分まで補助が出ます(1割負担の場合)。工事の前に申請が必要です。
福祉用具や福祉用品をうまく使いながら、家族の負担を減らしましょう。
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問介護」/「夜間対応型訪問介護」/「通所介護」/「短期入所生活介護」/「特定福祉用具販売」/長寿科学振興財団「腰掛便座」/厚生労働省「介護保険における住宅改修」
親の下の世話についてよくある質問
Q. 親の介護は、子どもの義務ですか?
A. 自分の手で下の世話をする義務まではありません。
法律(民法第877条)には、親子は互いに扶養する義務があると書かれています。ただ、この扶養はお金の面で支えることが中心と考えられています。
下の世話をプロに任せても、親を見捨てたことにはなりません。
Q. 異性の親の介助が、特につらいです。
A. つらいと感じるのは自然なことです。異性の親の介助こそ、プロに任せてよいのです。
介護の現場では、職員は男女関係なく排泄介助をしています。私の職場も同じです。
同性の職員を希望するときは、ケアマネに相談してみてください。ただ、私の職場のように、人手の面で同性だけで介助するのは難しいところもあります。
Q. 兄弟や夫が手伝ってくれません。
A. 下の世話を、家族の中で分けようとしなくて大丈夫です。下の世話はプロに任せてください。
そのうえで、通院の付き添いや費用の負担など、下の世話以外で何を分けるかを話し合います。ケアマネを交えて話すのも一つの方法です。

Q. おむつにしてもらうのは、親に悪くないですか?
A. 悪いことではありません。おむつは、体の状態に合わせて使うものです。
私の職場でも、立てる方はトイレで介助し、立つのが難しい方はベッドでおむつを交換しています。どちらにするかは、ケアマネや職員と相談して決めれば大丈夫です。
Q. 費用はいくらかかりますか?
A. 訪問介護で排泄などの介助(身体介護)を頼むと、1割負担の場合、1回あたりの自己負担は次のとおりです。
| 1回の時間 | 自己負担(1割) |
|---|---|
| 20分未満 | 163円 |
| 20分以上30分未満 | 244円 |
| 30分以上1時間未満 | 387円 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 567円 |
※1回の料金は要介護度では変わりません。
表は基本の料金で、実際は事業所ごとの上乗せ(職員の処遇改善など)や、早朝・夜間(25%増し)、深夜(50%増し)の割増が加わり、少し高くなります。
1か月に介護保険で使える額は、要介護度で決まっています。超えた分は全額自己負担なので、使い方はケアマネに相談してください。
特養の1か月の目安は、国の試算(要介護5・1割負担・30日)で次のとおりです。
| 部屋 | 1か月の目安 |
|---|---|
| 相部屋(多床室) | 約11万円 |
| 個室(ユニット型個室) | 約14万7,000円 |
※金額は、地域によって少し変わります。都市部ほど高くなります。部屋代・食費は施設ごとに違い、所得が低い方は軽くなる制度もあります。
※所得によっては2割・3割負担になります。有料老人ホームは、介護の費用のほかに入居費用などがかかり、ホームごとに違います。
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問介護」/「サービスにかかる利用料」/厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会「訪問介護」(第259回 資料1)
Q. 施設に預けるのは、かわいそうではないですか?
A. かわいそうではありません。特養に来るのは、家での介護ができなくなった方です。
家で無理を続けるより、施設で暮らすほうがいい。特養で働いていて、私はそう感じています。
詳しくは特養はかわいそう?家族はほっとした|祖母を5年預けた家族と特養職員の本音にまとめています。
Q. 親が施設を嫌がったら?
A. 無理に説得しなくて大丈夫です。まずケアマネに相談してください。デイサービスやショートステイで、家の外で過ごすことに少しずつ慣れてもらう方法もあります。

まとめ:親の下の世話はプロに任せていい
親の下の世話に抵抗があるのは、当たり前です。冷たいからではありません。
- 下の世話はプロに任せたほうがいい
- まず、ケアマネか地域包括支援センターに「下の世話ができない」と連絡する
- 親がトイレに一人で行けなくなったら、施設を考える。特養・介護付き有料老人ホーム・グループホームから選べる
- 家で介護を続けるなら、夜間と休日は家族が対応することが多い
下の世話は、プロに任せていいのです。まずは、ケアマネか地域包括支援センターに電話するところから始めてみてください。

