富士山はどこがきついのか ― 65歳で登ってわかった5つのきつさ

雲海の上にそびえる富士山(イメージ写真) 旅のこと

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65歳のとき、富士山に登りました。沖縄から、ツアーで行きました。

「富士山はきつい」とよく聞きます。私も登る前にそう聞いていました。ただ、どこがどうきついのかは、登るまで分かりませんでした。

先に結論を書きます。私がいちばんこたえたのは、登りではありませんでした。下りです。

それと、もう一つ。同じツアーの15人ほどのうち、山頂まで登れたのは7〜8人でした。

この記事は、2024年7月に登ったときの記録です。医学の話でも、登り方の指南でもありません。65歳の私が実際に歩いて、何がきつかったかを書きます。

青空にそびえる富士山の全景(イメージ写真)
※写真はイメージです

まず、どんなコースを歩いたのか

参加したのは、沖縄ツーリストの2泊3日のツアーです。那覇空港を朝7時台に出て、その日のうちに富士山の七合目まで登り、山小屋に泊まります。翌朝、暗いうちに出発して山頂を目指す日程でした。

富士山・吉田ルートの登山道を登るツアーの参加者
1日目の夕方。山小屋へ向かう途中の登山道です

登ったのは吉田ルートです。距離と時間は、ツアーの案内に次のように書かれていました。

区間距離時間
1日目 五合目(2,305m)→山小屋(2,900m)約3.5km約3時間
2日目 山小屋→山頂(3,710m)約2.5km約6時間
2日目 お鉢巡り約2.6km約2時間
2日目 山頂→五合目約8km約5時間

この表を、登る前によく見ていませんでした。あとから見ると、きつさの中身はここに全部書いてあります。

2日目は6時間登って、5時間下ります。合わせて11時間です。しかも下りは8キロあります。


きつさ① 登りより、下りがきつい(8キロ・5時間)

登りは、たしかに息が上がります。ただ、登りはゆっくり歩けば何とかなりました。

こたえたのは下山です。約8キロを5時間、下り続けます。

吉田ルートの下山道は、細かい砂と小石の道です。踏むたびに足がずるずると流れます。ブレーキをかけながら歩くので、太ももと膝に負担がかかり続けます。

富士山・吉田ルートの下山道。赤茶色の砂と小石の斜面が続く
吉田ルートの下山道。この砂と小石が、8キロ続きます

私の場合、膝への負担がとにかく強く出ました。それに、急な砂利の斜面で足を取られて、何度も尻餅をつきました。下りきったころには、お尻が痛くなっていました。

しかも、下山道は登ってきた道と別です。ツアーの案内にも「五合目から山頂までの登山道は往路と復路で異なります」と書かれていました。知っている景色は出てきません。同じような砂の斜面が、延々と続きます。

「富士山 きつい」で調べている方に、私がいちばん伝えたいのはここです。登りの心配ばかりしていましたが、本当にきついのは帰り道です。

富士山の下山道にある道標。富士スバルライン五合目と吉田口を示している
下山道の道標。雲の下に町が見えます

きつさ② 夜中の3時半に出発する

山小屋に着いたのは、1日目の夕方6時ごろでした。夕食をとって、そのまま仮眠に入ります。

標高2900メートルの山小屋と、夕暮れの雲海
標高2,900mの山小屋。1日目の夕方です

翌朝の出発は3時半です。

山小屋は男女別の相部屋で、大部屋に並んで寝ます。寝床はカーテンで仕切られていました。ツアーの案内にも、はっきりこう書いてありました。

山小屋は男女別相部屋となり、十分な仮眠が取れないことがありますので、前日は十分な睡眠をお取りください。

私の隣は、70歳の男性の方でした。それでも、いびきは聞こえてきます。ただ、私はあまり気にならずに眠れました。ここは人によると思います。神経質な方には、たしかにつらい環境かもしれません。

つまり、2日目は寝不足の体で11時間歩くことになります。体力そのものより、この条件がきつさを底上げしていたと思います。


きつさ③ 7月なのに、山頂は4℃だった

沖縄は真夏でした。富士山の上は違いました。

富士山から見た夜明けの空と雲海
2日目の夜明け。この日の山頂は3.9℃でした

あとで気象庁の記録を調べてみたところ、私が登った日の富士山頂は、最低気温3.9℃、平均5.5℃。雨も3.1ミリ降っていました。

平均気温最低気温降水量
7月24日(山小屋に泊まった日)5.5℃4.1℃0.7mm
7月25日(山頂へ登った日)5.5℃3.9℃3.1mm

ツアーの案内にも「宿泊の山小屋は標高2,900mに位置し、気温は平地より15℃程低く、山頂では0℃くらいまで下がることがあります」と書かれていました。

私が着ていたのは、上下ともユニクロのヒートテックです。その上に、レンタルのフリースと雨具を重ねました。ズボンはワークマンのクライミングパンツで、2,000円ほどのものです。

高いものは、何ひとつ買っていません。それでも寒さは十分しのげました。

ただし、ニット帽だけは必須です。帽子はツアーの案内にも必需品として載っていましたが、私が実際に感じたのは耳のほうでした。耳を隠さないと寒いのです。つばのある帽子だけでは足りません。

沖縄で暮らしていると、4℃という気温が体になじみません。7月でも、冬の支度が要ります。


きつさ④ 自分のペースでは歩かせてもらえない

これは、登る前に想像していなかったことです。

登山中は、富士登山専門ガイドが先頭に立ち、全員が同じペースで歩きます。それも、拍子抜けするくらいゆっくりです。

列になってゆっくり登る登山者(イメージ写真)
※写真はイメージです

ガイドは、急いで登ると高山病になると説明していました。だから、ゆっくりと呼吸を整えながら登るのだ、と。

正直なところ、最初は「もう少し歩けるのに」と感じました。体を動かす仕事をしていますし、筋トレも続けています。ところが、そのゆっくりのまま6時間登り続けると、終わりのころにはちょうどよかったのだと分かりました。

結果として、私たちのグループでは、高山病になった人は一人もいませんでした。

ガイドと添乗員が1名ずつ、五合目から山頂の往復に同行します。人任せにできる部分がある、というのはツアーの大きな利点でした。


きつさ⑤ 天気は、自分では選べない

出発したのは2024年7月24日です。その日、台風3号が沖縄の先島に接近していました。あとで調べると、ちょうどこの日が台風の最盛期で、中心気圧940ヘクトパスカル、最大風速45メートルという勢力でした。

那覇の飛行機は飛びました。ところが、山の上にも影響がありました。上空3,000メートル付近も荒れているという見立てが出ていて、山頂での行動が制限されたのです。

霧に包まれた山の稜線に立つ登山者(イメージ写真)
※写真はイメージです

実は、前の晩にはもっと大きな話が出ていました。台風の影響で、登頂そのものを中止して帰ることになるかもしれない。ガイドから、そう聞かされていたのです。

夜中の2時半ごろに起こされて、「登れます」と告げられました。そのときは、素直によかったと思いました。

そして山頂に着いたあと、お鉢巡りは中止になりました。

お鉢巡りというのは、山頂の火口をぐるりと回って、日本最高地点の剣ヶ峰(3,776m)を踏むコースです。約2.6キロ、2時間。富士山の「いちばん高いところ」は、実はここにあります。

山頂までは登りました。剣ヶ峰には行けませんでした。

そういう経過があったので、中止と聞いても、がっかりはしませんでした。登れただけでもありがたい、という気持ちのほうが強かったです。

ツアーの案内には、こう書いてあります。

天候状況や現地事情等により危険が予想される場合は、富士登山専門ガイドの判断で登山を中止させていただく事があります。その場合、旅費の払い戻しはございません。

申し込むときは読み飛ばしていた一文でした。これは本当に起こります。


道具は、買わずに借りました

富士登山は装備が要ります。私はやまどうぐレンタル屋の7点セットを申し込みました。料金は14,900円(税込)からでした。2024年7月に借りたときの金額です。

中身はこの7つでした。

借りたもの
雨具(上下)
登山靴(登山用靴下つき)
ザック
ストック
ヘッドランプ
ショートスパッツ
フリース

申し込むと出発前に自宅へ郵送されてきて、帰りは現地で返せます。沖縄からの参加でも荷物が増えません。

登山用のザックと登山靴(イメージ写真)
※写真はイメージです

※料金やセットの中身は変わります。最新の金額は公式サイトでご確認ください。上に書いた金額は、2024年7月に私が借りたときのものです。

正直に書きますが、私は申し込みの時点で「ショートスパッツ」が何なのか分かっていませんでした。半ズボンかと思っていたくらいです。実際は、靴と足首をおおうカバーでした。あの砂の下山道で、靴の中に小石が入るのを防ぐためのものです。

そして、7点の中でいちばん役に立ったのが、このショートスパッツでした。富士山の下りは砂利道がずっと続きます。これが無ければ、靴の中に砂利が入り放題だったはずです。

一度きり登るのなら、借りるので十分だと思います。


登れたのは、15人のうち7〜8人でした

これは、書いておかなければいけないことだと思います。

私たちのツアーの参加者は、全部で15〜16人でした。年齢は50代から70代です。

そのうち、山頂まで登れたのは7〜8人でした。半分ほどの方は、途中で登頂をやめています。

やめる判断をしたのは、ご本人ではありません。ガイドです。

ガイドは、こう話していました。

「もう無理です、と伝えるのも自分の仕事だ」

理由も説明してくれました。無理をして登ってしまうと、下りが地獄になるからです。富士山は、登ったら同じ足で8キロ下りなければなりません。登りで力を使い切った人が、その下りを歩けるはずがない、ということでした。

途中でやめた方が弱かったわけではないと思います。あの下りを知っていれば、止めるほうが正しい判断だと分かります。

そして、この数字が「富士山はきついのか」への、いちばん正直な答えだと思っています。半分は登れませんでした。


60代でも富士山に登れるのか

このツアーには、参加できる年齢が決められていました。75歳までです。

案内には、こう書き添えてありました。

ただし上記年齢を超える場合でも、登山経歴や日頃の運動状況によって参加可能と判断した方は例外としてお申込みを承ります。

裏を返せば、60代は、断られる年齢ではないということです。私は65歳で申し込んで、普通に受け付けてもらいました。

ただし、年齢よりも中身のほうが大事だと思います。2日目に11時間歩けるかどうか。それだけです。

私の場合は、介護の仕事で毎日体を動かしていることと、長く続けている筋トレが、たぶん効いていました。特別な訓練はしていません。

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富士山登山のよくある質問

Q. トイレはありますか
各山小屋のそばにあります。チップ制で、1回200〜300円が目安です。

ただし、私が泊まった山小屋では、一度払えば何度でも使わせてもらえました。あとで調べてみると、宿泊者は無料のところ、2回目からは無料のところなど、山小屋によって扱いが違うようです。その場で聞くのが確実です。いずれにしても、小銭は多めに持っていったほうがいいです。

Q. お風呂は入れますか
山小屋にはありません。私たちのツアーでは、下山した日の夜に石和温泉の宿に泊まりました。

Q. 入山料はいりますか
私が登った2024年は、吉田ルートで通行料2,000円の徴収が始まった年でした。五合目の登山道入口にゲートが設けられ、7月1日から9月10日までの期間、午後4時から翌朝3時までは登下山道が閉鎖されます(山小屋に泊まる人などは通れます)。1日の登山者が4,000人を超えた場合も閉鎖です。私はツアーで、この2,000円は旅行代金に含まれていました。

これとは別に、富士山保全協力金1,000円があります。こちらは任意の寄附金です。

ただし、いまは金額も仕組みも変わっています。2026年は4つのルートすべてで入山料4,000円になり、時間規制も14時から翌3時までに広がりました(山小屋に泊まる人は除く)。吉田ルートの1日4,000人という上限は続いています。これから登る方は、必ず最新の情報をご確認ください。

Q. 荷物は全部背負って登るのですか
いいえ。登山に要らない荷物は初日のバスに預けられて、下山後に受け取れます。背負うのは山で使うものだけです。これはツアーの場合です。個人で登るときは、荷物を置く場所も自分で考えることになります。

Q. ご来光は山頂で見るのですか
私たちの日程では、山頂ではなく登山の途中で見る予定になっていました。
ただ、私たちのときは見えませんでした。天気が悪かったからです。

そのかわり、前日の夕方に山小屋から見た夕日と、登っている途中の景色は、とてもよかったです。ご来光だけが目的ではないのだな、と思いました。

なお、高山病の感じ方は人それぞれです。持病のある方は、申し込む前にかかりつけの先生に相談してみてください。


それで、富士山はきついのか

きついです。ごまかしても仕方がありません。

ただ、きつさの中身は、登る前に思っていたものとは違いました。

  • 登りは、ゆっくり歩けば登れる(むしろゆっくりのほうがいい)
  • 下りが長い(8キロ・5時間)
  • 寝不足のまま歩く
  • 7月でも山頂は4℃
  • 天気は選べない

この5つを知って準備できるかどうかで、ずいぶん変わると思います。私は下りを甘く見ていました。

そして、同じツアーの半分の方は山頂まで行けませんでした。登れなくても、それは普通のことです。

その中で、65歳の私は山頂まで登れました。剣ヶ峰までは行けませんでしたが、行けたところまでは自分の足で行きました。

富士山頂上浅間大社奥宮の石碑の前に立つ筆者(65歳当時)
山頂の浅間大社奥宮。65歳のときです

いま67歳です。この9月に、屋久島の宮之浦岳へ登ります。2日で18時間半歩く行程です。富士山とどちらがきついのか、帰ってきたら書こうと思います。

60代、屋久島の宮之浦岳へ ― 2日で18時間半、体力が持つか

この記事を書いた人
さぶろー

さぶろー/67歳・介護福祉士。60歳で定年退職し、未経験から介護の世界へ。7年目の今もパートで現場に立たせてもらっています。60代が体を壊さずに働き続けるために、自分で試して続いたことを書いています。沖縄在住、犬9匹。週2回のジム通いが日課です。

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