パートなのに、正職員と同じ量の仕事を求められる。断っていいのか、分からない。
私も同じでした。働きはじめたころはやる気満々で、頼まれるまま何でも引き受けて、心も体も限界になり、職場を辞めました。
パートの仕事はどこまでやればいいのか。67歳の今も迷いながら、自分なりの線引きを決めています。
今日はその線引きの決めかたを、失敗も交えてお話しします。
デイサービスは2週間、デイケアは2年で辞めました
私が一番困ったのは、年間の行事がとても多いデイサービスでした。
毎月何かの行事があり、その企画は担当になった職員がボランティアで組み立てます。
仕事が終わった後や自宅でやるのが当たり前になっていて、とんでもない負担でした。
この職場は2週間で辞めました。
次のデイケアでも、似たようなことがありました。正職員が当然のようにやっているので、パートの私にも半ば強制的に同じ役割が回ってくる。
こちらは2年続けましたが、やはり辞めました。
今振り返っても、どちらも辞めてよかったと思っています。
いくつかの職場を経験して分かったのは、仕事の範囲は施設ごとに大きく違うということです。
人手不足が深刻な施設ほど、パートにも正職員と変わらない役割が回ってきますし、逆に人手に余裕があれば補佐が中心のこともあります。
持っている資格によっても変わります。
つまり、決まった正解はなく、その施設の状況や自分の資格で決まってくるのです。
事故が起きても、パートが全部背負わなくていい

「事故が起きたらどうしよう」という不安は、誰にでもありますよね。よく分かります。
私が今いる特別養護老人ホームでも、病院に行くほどの事故が過去に何度かありました。
そういうときは事故検討会議が開かれるのですが、その会議のリーダーを務めるのも、記録を書くのも正職員です。
家族とのやり取りは事務所の相談員が窓口になってくれて、現場の介護職員が直接家族と話す場面は、ほとんどありません。
つまり、重い対応には、それを担当する専門のスタッフがちゃんといるのです。
事故に居合わせた本人が、個人的に重く受け止めるのは当然のことです。ただ、そのあとの事故処理は専門の職員の仕事です。
だから、家族への説明や事故の記録を「私が全部背負わなきゃ」と思い込まなくて大丈夫。不安なときは、その場で正職員や相談員に伝えて任せる。
それでいいのだと、私は思っています。
「これ医療行為では?」と迷ったときの見極めかた
ここまで「線引きは施設によって違う」とお話ししてきましたが、施設のルールに関係なく、法律ではっきり決まっている線もあります。
医療行為、お薬、資格の3つです。順番に見ていきますね。
まず医療行為です。医師法という法律で、医療行為は医師と看護師にしかできないと決まっています。
これは経験年数とは関係がありません。注射や点滴、摘便、床ずれの専門的な処置などがこれにあたります。
「忙しそうだから代わりにやってあげよう」という場面ではなく、できないことなので看護師さんに伝えます。
では体温を測る、軟膏を塗る、湿布を貼る——このあたりはどうかというと、国が「医療行為ではない」と整理してくれています。
ただ、なかには細かい条件がついているものもあります。
たとえば爪切り。切っていいのは「爪そのものに異常がなく、まわりの皮膚に化膿や炎症がなく、糖尿病などで専門的な管理が必要でない場合」だけです。
巻き爪や陥入爪は対象外。そして専門的な管理が必要かどうかを判断するのは、私たちではなく医師か看護師です。
耳垢の除去も条件つきです。奥にたまって耳が聞こえにくくなった状態(耳垢塞栓/じこうそくせん)を取り除くことは、私たちにはできません。
迷ったときは、やらずに看護師さんに伝える。「うちではやってもらってる」と言われても、施設のルールより法律のほうが上です。
断ることは、わがままではなく、自分と利用者さんの両方を守る行為です。
パートはお薬の与薬をしていい?私の職場の線引き

なかでも迷いやすいのが、お薬だと思います。
介護の現場では、「配薬(はいやく)」と「与薬(よやく)」を分けて使います。
配薬は、その方のお薬を仕分けて、手元に準備するところまで。与薬は、実際に飲んでいただくところまでを指します。
似ているようで、責任の重さがまるで違います。ここから先は「与薬」の話です。
一包化された(1回分ずつ袋にまとめられた)お薬の与薬はできますが、いくつか前提があります。
まず、医師か看護師が「この方は容態が安定していて、飲み込みに特別な配慮もいらない」と確認していること。
そのうえで、ご本人やご家族から「介護職員が介助してよい」という依頼があること。
以上は施設側が確認するべきことです。この2つがそろって、はじめて私たちが与薬できます。
裏を返すと、たとえば最近むせることが増えた方に、いつもの調子で与薬するのは危ないということです。
飲み込みの様子がいつもと違うと感じたら、その日は看護師さんに伝える。決まりが細かいのは、そういう場面で立ち止まれるようにするためなのだと思います。
ちなみに、私が今勤めている特養では、パート職員はお薬の与薬をしないことになっています。
パートは勤務する時間が限られていて、利用者さんの状況を正確に把握できない場合があるからです。
こうしてはっきり線を引いてくれる施設は、働く側としてはありがたいですね。
無資格でも介護で働ける?訪問介護と施設の違い
3つめは資格です。ここは施設で働くか、訪問で働くかで大きく変わります。
- 訪問介護(ホームヘルパー)……無資格では働けません。介護職員初任者研修以上の修了が必要です
- 施設(特養・デイなど)……無資格でも働けます。ただし2024年度から、資格のない方を採用した施設は、1年以内に認知症介護基礎研修を受けさせることが義務になりました
帰り際に仕事を頼まれたら?私の断り方
もう一つ、長く続けるうえで欠かせないのが「時間で切り上げる」ことです。
現場は忙しいので、帰る間際にちょっとした仕事を頼まれることがよくあります。そこでついつい引き受けてしまうと、それが当たり前になってしまうんですね。
私は「もう時間ですので」とはっきり伝えて、断って帰るようにしています。一度これを普通にしてしまえば、周りもそういう人だと分かってくれます。
本当は、良い上司なら「もう上がっていいよ」と声をかけてくれます。でも忙しいときはそうならないことも多い。
だからこそ、自分から「お先に失礼します」と申し出ることが大事です。
パートは、決められた時間を一生懸命働けば十分。時間が来たら気持ちを切り替える——この姿勢が、心と体を守ってくれます。
まとめ:60代が介護パートを長く続けるために
パートはどこまでやればいいのか、迷う気持ちはよく分かります。私流のポイントは4つです。
- 無理な仕事を求められたら、辞める選択肢もある
- 事故対応や家族への説明など重い対応は、相談員などの専門スタッフに任せる
- 医療行為・与薬・資格の線は法律で決まっている。迷ったら看護師さんに伝える
- 終業時間はきちんと区切り、自分から申し出て帰る
もちろん、職場のルールは踏まえたうえで、自分の考えや希望はきちんと伝えることが大切です。
パートとフルタイム、給料はどれくらい違う?

最後に、お金の話にも少し触れておきます。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、施設で働く介護職員の時給は、パートが1,323円。
フルタイムを時間あたりに直すと約1,567円です(全国平均。夜勤手当や残業代は含みません)。
年間の賞与は、フルタイムの50万円あまりに対して、パートは7万円ほど。
働く時間も報酬も違うのですから、負う責任の重さが違うのも当然のこと。私はそう思っています。
ただ、世の中の平均と比べると、介護の賃金は低いのです。
フルタイムの時給換算で、全産業平均(約2,065円)の4分の3ほど。体を使い、命を預かる仕事の値段としては、安すぎると感じています。
国には、着実な底上げをお願いしたい。
そして、安ければ人は集まりません。有効求人倍率(厚生労働省・職業安定業務統計)を並べると――
- 全職業:1.14倍(令和6年度)
- 介護関係職種:4.08倍(同)
- 施設の介護職員:3.24倍(令和5年度)
- 訪問介護:14.14倍(令和5年度)
特に訪問介護は、1人の求職者を14の求人が取り合っている計算です。
一方で、働く側から見れば、これだけ人が求められているということでもあります。だからこそ、施設側にも要望を伝えやすい。
以前に比べれば、ずいぶん言いやすい時代になったと思います。
長く元気に働き続けるために、あなたなりの心地よい線引きを、少しずつ見つけていってくださいね。


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