とにかく、覚えられない。
60歳でサラリーマンを定年退職したあと、私は未経験でデイサービスの仕事を始めました。
利用者さんの顔と名前が一致しない。介助のやり方が身につかない。始めたばかりのころは、毎日そればかり考えていました。
同じ立場の人は、けっして少なくありません。中途採用で介護職員になった人の47.1%は、前の仕事が介護・福祉・医療とはまったく関係のない仕事でした(介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」)。
今日は、私が実際にやった工夫をお話しします。
顔と名前が覚えられない
最初にぶつかったのが、これでした。
そのデイサービスは、テーブルごとに利用者さんの固定席が決まっていました。ところが、テーブルの上に名前が貼られていないのです。
新しく入った者には、どなたがどの席なのか分かりません。しかも、その施設にはマニュアルもありませんでした。
そこで私は、自分のノートにテーブルの配置図を書きました。そこへ、それぞれの席の利用者さんのお名前を書き込んでいったのです。
あとでノートを見返しながら、顔とお名前を確認して覚えていきました。
地味なやり方です。でも、これが一番効きました。
顔と名前が分からないと、声のかけ方も、どなたにどの介助が必要かも分かりません。すべての仕事に影響します。だから、まずそこからでした。
移乗のやり方は、先輩の背中とYouTubeで覚えた
次に苦労したのが、介助のしかたです。
椅子から車いすへの移乗。車いすからベッドへの移乗。横に付き添って歩くときの歩き方。
その一つ一つに危険が伴いますから、ある程度の学習が要ります。
私は介護を始める前に、ヘルパー2級を取っていました。そこで仕事の全体像や、高齢者の特徴を学びました。
ただ、実際の現場は、それだけでは足りません。先輩方の動きを見て、実際のやり方を学んでいきました。
それと、最近はYouTubeです。
移乗のしかた、食事介助のしかた、おむつ交換。基本的なやり方を動画で発信している方がたくさんいます。私は、そこから生かせるところは生かしていきました。
そして、介護の仕事を始めて3年が経ったころ、介護福祉士の資格を取りました。
これから介護の仕事を続けていくうえで、学びは必要だと思っています。
60代からでも学べる場所は、思っているより多いのです。
事故(ヒヤリハット)を経験して、分かったこと
仕事に慣れるまでには、介護事故(ヒヤリハット)の経験もあります。
それほど大きなものではありませんでした。でも、いくつか思い出します。
トイレ介助の最中、目を離した隙に利用者さんが立ち上がり、便座からずり落ちて尻もちをついたこと。
食堂で待っている間に、リクライニングの車いすを使っている利用者さんが、床にずり落ちてしまったこと。
入浴介助のとき、誤って利用者さんの腕や足がストレッチャーの側面に当たり、皮膚が剥がれてしまったこと。
ご高齢の方の皮膚は、とても弱くなっています。触れただけで剥がれてしまう方もいるのです。
その都度、ヒヤリハット報告書を書いて、振り返りをしました。
今思うのは、大きな事故につながらなくてよかった、ということです。
そしてもう一つ。介護は、人間を扱う仕事です。そのことが、身にしみて分かるようになりました。
まとめ
利用者さん一人ひとりに、ご家族がいらっしゃいます。その方は、ご家族にとって大事な親でもあるわけです。
仕事の中では、つい流れ作業になってしまいがちです。
でも、私たちは一人ひとりの人間に向き合っているのだ。その視点を持ち続けることが大事だと、思っています。
「覚えられない」は、恥ずかしいことではありません。
配置図のノートでも、先輩の背中でも、動画でもいい。自分に合うやり方を一つ見つければ、そこから進めます。
実際、介護の現場で働く人の19.2%は60歳以上です。およそ5人に1人。平均年齢は48.7歳ですが、私のような年齢の人も、思っているより多いのです。
60歳から始めても、遅くはありません。
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